堺は今日も賑やかである。賑やかな通りを避け

堺は今日も賑やかである。賑やかな通りを避けるように裏路地で隆行達は則正の戻りを待っていた。「則正の兄貴遅いですねぇ。」五郎三郎がうろうろしながら呻いていた。先程から、うろうろろうろしては、この発言を繰り返している。「少しは落ち着け。」隆行が声をかけるが、「いやぁ、落ち着けませんよ。これに失敗したら、残り2文しか無いんですよね?2文じゃ何も出来ませんよ。」「有るより、無い方が気楽になるだろう。だから、落ち着け。」隆行が五郎三郎を小突いていると、権兵衛が通りの方を指差し、「あ。則正の兄貴が来ました!」その言葉に、隆行と五郎三郎が直ぐさま反応する。三人の視線の先には大事そうに箱を抱えて、肩を落として向かってくる則正がいた。入る時とは違う箱を持っている則正に、明るい予想を抱いた三人は、則正が裏路地に入ると直ぐに駆け寄り、隆行が声をかけた。「どうだった?!」則正は、元気無く箱を出した。三人が中身を覗くと大金が入っている。驚いている三人に則正はようやく、「…500貫あります。」とだけ言った。『おぉ~!!』三人が興奮して声をあげた。